高知地方裁判所 平成6年(ワ)409号 判決 1996年3月26日
原告
河村妃美
ほか二名
被告
濱田徳五郎
主文
一 被告は、原告河村妃美に対し、金五三〇二万円及び内金四九五二万円に対する平成三年九月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告は、原告河村真瑛に対し、金一一三万円及び内金一〇三万円に対する平成三年九月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 被告は、原告河村宗一に対し、金二七五万円及び内金二五〇万円に対する平成三年九月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
五 訴訟費用は、これを二分し、その一を原告らの、その余を被告の負担とする。
六 この判決の一ないし三項は、仮に執行することができる。
事実
第一請求
被告は、
一 原告河村妃美(以下「原告妃美」という)に対し、金一億二一九八万二四一〇円及び内金一億〇八一八万二四一〇円に対する平成三年九月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を、
二 原告河村真瑛(以下「原告真瑛」という)に対し、金二一四万三九九七円及び内金一九五万三九九七円に対する平成三年九月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を、
三 原告河村宗一(以下「原告宗一」という)に対し、金三八五万円及び内金三五〇万円に対する平成三年九月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を、
それぞれ支払え。
第二原告の主張(【 】内は被告の認否等)
一 事故の発生【認める】
1 発生日時 平成三年九月二二日午後七時三〇分ころ
2 発生場所 高知県南国市大埇甲一三七番地先路上(交差点)
3 加害車両 被告運転の軽四輪貨物自動車(高知四〇ほ一六四六号)
4 被害車両 原告妃美運転、原告真瑛同乗の原動機付自転車(南国市う二五五二号)
5 事故態様 被告が加害車両を運転し、片側一車線、両側二車線で幅員六メートル(道路西側に幅員約四メートルの待避所があるため、2記載の交差点付近の幅員は約一〇メートルとなつている)の農免道路を北進していたところ、右方(東方)の幅員約三メートルの、一時停止の表示のある市道から交差点内に直進(西進)進入してきた被害車両と衝突した。
二 被告の責任原因【認める】
被告には前方注視を怠つた過失があり、民法七〇九条により、また、加害車両の保有者として自賠法三条により、原告らに生じた損害を賠償する責任がある。
三 原告妃美について
1 傷病名【概ね認める】
第三・第四胸椎骨折、脊髄損傷、頭部・頸部・腰部・胸部・腹部打撲、左眼瞼・両下腿擦過傷、顔面裂創、右足擦過傷、肝損傷、外傷性心不全、外傷性シヨツク、ストレス潰瘍、腸管瑞動運動及び脊髄損傷による神経因性膀胱という排尿筋収縮不全・排尿筋外尿道括約筋協調不全を受傷
2 治療状況【不知】
(一) 入院
(1) 藤原病院(南国市大埇乙九九五番地)
平成三年九月二二日(事故当日)ないし同月二七日まで六日間
(2) 高知医科大学医学部附属病院整形外科(南国市岡豊町小蓮)
平成三年九月二七日ないし平成四年八月五日まで三一四日間
(3) 高知医科大学医学部附属病院整形外科(胸髄損傷による治療継続のための入院及び臀部褥創により再入院)平成五年四月六日ないし同年六月一二日まで六八日間
(二) 通院
(1) 高知医科大学医学部附属病院整形外科
ア 平成四年八月六日ないし同年一二月三一日までの一四八日のうち、通院実日数一五日
イ 平成五年一月四日ないし同月末日までの二八日のうち、通院実日数四日
ウ 平成五年六月一日ないし同月末日までの三〇日のうち、通院実日数一日
(2) 藤原病院
平成五年二月四日ないし同年三月三一日までの五六日のうち、通院実日数二九日
(3) 高知医科大学医学部附属病院整形外科
平成五年三月一日ないし同月末日までの三一日のうち、通院実日数五日
(4) 高知医科大学医学部附属病院泌尿器科
ア 平成四年八月一日ないし平成五年一月三一日までの一八四日のうち、通院実日数八日
イ 平成五年三月二日ないし同月二〇日までの一九日のうち、通院実日数一九日
(5) 高知医科大学医学部附属病院整形外科
ア 平成五年七月一日ないし同年八月三一日までの六二日のうち、通院実日数二日
イ 平成六年二月一日ないし同月末日までの二八日のうち、通院実日数一日
(6) 高知医科大学医学部附属病院泌尿器科
平成五年七月一日ないし平成六年三月末日までの二七四日のうち、通院実日数九日
(三) 以上、入通院期間は、平成三年九月二二日ないし平成六年三月末日までの九二二日間であり、うち、入院日数三八七日、通院日数五三五日(通院実日数九三日)である。
3 後遺障害の程度及び等級
本件受傷による脊髄損傷及び胸髄損傷による下半身麻痺の回復は絶望的であり、平成六年二月一〇日に症状固定し、自賠責保険後遺障害認定等級が一級三号と認定されている。
【一級三号と認定されていることは認め、その余は不知。認定等級については、常に介護を要する状況ではなく、家屋改造で車椅子生活もできるのであるから、三級三号(神経系統の機能又は精神に著しい傷害を残し、終身労務就労不能)に該当するというべきである】
4 損害【争う】
(一) 診療費 三万七六六〇円(左記(1)~(3)の合計額)
(1) 歯の治療費 一万五一六〇円(平成五年三月六日ないし同月一八日までの間の歯の治療費)
(2) 別病院による治療費 一万三〇一〇円(平成五年四月二〇日、同年九月七日、同年一一月三〇日、平成六年一月九日の近森病院における治療費)
(3) 右入通院期間外の治療費 九四九〇円(平成六年四月五日における高知医科大学医学部附属病院における治療費)
【症状固定(平成六年二月一〇日)以降の治療費であり、認められない】
(二) 入院中の諸雑費 六三万八五八〇円(左記(1)~(3)の合計額)
(1) 入院日数三八七日に対する一日一四〇〇円の割合で算出した金額 五四万一八〇〇円
三八七日×一四〇〇円=五四万一八〇〇円
【一日につき一二〇〇円が相当である。なお、入院期間が長期にわたる場合、逓減されるべきである】
(2) 五万三三〇〇円(入院期間中における貸ベツト料、貸テレビ料及び平成三年一〇月四日支払日とする以降平成五年六月一二日までの間の電気料の合計金額。貸ベツト、電気は、各部屋に常時備え付けられている必要不可欠ならざる一種の備品等であり、これらの代金を支払つたからと言つて、一般に言う入院雑費に計上すべきものではない。また、貸テレビは、原告妃美は、テレビを娯楽として楽しめる状態には到底なく、突如身体障害者として生涯生活しなければならなくなつたことによる自暴自棄との葛藤、将来に対する孤独感、健康人への苛立ち等、多々あるうち、貸テレビは、原告妃美の孤独感を慰める唯一の備品であり、本件貸テレビ料は、軽傷による一般的な入院雑費以外の入院必要費として計上すべきである)
【本来(1)の雑費内で処理されるべきであり、別途計上すべきではない】
(3) 四万三四八〇円(入通院期間中における診断書等の文書料)【否認する】
(三) その他の雑費 一万五九四二円(以下の合計額)
高知医科大学医学部附属病院内の薬店(紙おむつ代金等九三八二円)、(有)西田順天堂薬局(ガーゼ代金四五〇円)、(有)サンコール・コーチ(紙おむつ代金一八〇三円、おむつカバー・半切り紙おむつ五枚の代金二八〇七円)、(有)かわかみ呉服店(T字帯さらし一枚一五〇〇円)
右(二)(1)の本来の雑費は、日用品雑貨費(寝具、衣類、洗面具、食器等の購入費)であつて、身体も動かすことができない原告妃美の本件受傷内容からすれば、これらは、一般の雑費とは区別されるべきである。
【これらは右(二)(1)の本来の雑費の範疇である】
(四) 医療器具代 三三三万七三〇八円(左記(1)~(4)の合計額)【争う。有効かつ相当な場合、殊に医師の指示がある場合に限られるべきである】(全て医師の指示に基づく購入である)
(1) 二八八万九一五〇円(平成四年八月七日以降、余命年数の間、毎年間必要とするレツク・パツク、尿パツク等の年間購入代金一〇万二〇〇〇円を、平成四年度を一八歳とし、余命年数を六四年として、新ホフマン係数を乗じる方式によつて算出した金額)
一〇万二〇〇〇円×二八・三二五=二八八万九一五〇円
(2) 九万一九二五円(医師の指示による平成三年一〇月二八日購入の頸椎装具一式の代金)
(3) 一九万六二七〇円(医師の指示による平成四年二月二五日購入の両長下肢装具一式の代金)
(4) 一五万九九六三円(通院中(平成四年六月二四日ないし同年八月二一日までの間)に購入した、床ずれ防止のためのエアマツト一式及びそれにかかる備品一式の代金
(五) 介護費 六五六七万九三六〇円(左記(1)~(3)の合計額)
(1) 二三二万二〇〇〇円(平成三年九月二二日ないし平成四年八月五日まで(三一九日)及び再入院による平成五年四月六日ないし同年六月一二日まで(六八日)の間合計三八七日間における入院の付添人費用。一日当たり六〇〇〇円の割合)
【一日につき四五〇〇円が相当である】
(2) 三二一万円(平成四年八月六日(退院日の翌日)ないし平成六年三月三一日までの五三五日間に対する一日六〇〇〇円の割合による介添人費用(右五三五日の通院期間には、再入院の期間は含まない))
【一日につき四五〇〇円が相当である】
(3) 六〇一四万七三六〇円(通院終了の翌日である平成六年四月一日(平成六年をもつて二〇歳に達するとして)以降、二〇歳から同年齢の平均余命年数である六二年間にわたつて常時付添介護を要する。その費用として一か月当たり一八万円(一日当たり六〇〇〇円の割合)を要するとして、右余命年数に対応する新ホフマン係数を乗じる方式により算出した金額
一八万円×一二か月×二七・八四六=六〇一四万七三六〇円
(なお、一日当たり六〇〇〇円としたのは、原告妃美は、将来治癒することのない重度の胸髄損傷等による両下肢麻痺等及び重度の脊椎損傷のもと、神経性膀胱という泌尿器に傷害をもつて排尿筋収縮不全・排尿筋外尿道括約筋協調不全という後遺障害(一級三号)を生涯背負つての生活であり、近親者の介護状況等に鑑みれば、近親者としては、常時目の届く、声の聞こえる範囲に居ることに気を付けていなければならず、かつ、原告妃美は、生涯片時も車椅子を手放すことのできない障害下にあり、付添近親者としては、孤独に陥りがちな原告妃美の話相手にもならなければならず、常に心身ともに介護を要することによる)
【近親者付添人は一日につき二〇〇〇円ないし四五〇〇円である(原告妃美同様一級三号の被害者につき、介護料として一日四〇〇〇円と認定している裁判例がある)が、南国市において身体障害者に対する介護費給付がなされるケースであるから、減額を考慮されたい。また、将来にわたる介護費であるから、新ホフマンではなく、ライプニツツ方式によるべきである。
また、原告妃美は、常に心身共に介護を要する状態にあるとして将来の介護料請求をする一方で、同時に、(七)以下で車両購入改造費、車椅子費用及び家屋改造費等の請求もしているが、これらは相矛盾する。即ち、原告妃美において、将来にわたり車両を購入して、または車椅子を買い替えて新築もしくは改造家屋で生活するということは、自立するということであつて、将来にわたる常時介護料を必要としないことを意味するから、両者を請求することは相当でない】
(六) 通学等タクシー代 二五万九七五四円(入通院時に要したタクシー代金のうち二万六一五〇円及び平成四年九月一日以降平成六年三月一日までの二六三日間の学校・自宅間の送迎による自家用車輛の燃料代金二三万三六〇四円の合計)
(七) 車椅子代 五五〇万四〇七七円(左記(1)、(2)の二台分(医師が二台必要と指示)及び特別注文料金一〇万五〇〇〇円の合計額。原告妃美は、生涯下半身麻痺にて、自力で歩行することができず、常時尿意等に気を付けながら、片時も車椅子を手放せない状況下にあり、車椅子は原告妃美の「両脚」ともいえるものである)
(1) 二六三万八二〇二円(平成四年六月二四日(平成四年度、一八歳として)に支払つた車椅子・備品の単価一六万二八五二円及び、以降四年毎に買換えを要するため、(平均余命六四年として)将来一六台分の買入代金として、中間利息を控除(単利計算)して、左の計算式によつた額。
一六万二八五二円+一六万二八五二円×(六四年÷四年)×九五%=二六三万八二〇二円
(2) 二七六万〇八七五円(平成五年一二月六日(平成五年度、一九歳として)に支払つた車椅子・備品の単価一八万一〇四一円及び、以降四年毎に買換えを要するため、(平均余命六三年として)将来一五台分の買入代金として、中間利息を控除(単利計算)して、左の計算式によつた額。
一八万一〇四一円+一八万一〇四一円×(六三年÷四年)×九五%=二七六万〇八七五円
【現実に損害が発生しているわけではなく、未確定であり、現実に発生していない損害については賠償の対象とはならない】
(八) 車両購入改造費 二一八万五〇〇〇円(原告妃美が乗車する購入車両(平成六年六月分購入)にかかる身体障害者用改造費二三万円(申請手数料一万五〇〇〇円を含む)を余命年数六二年間(平成六年度を二〇歳と換算)に、以降六年(減価償却年数)毎に買換えを要するものとして中間利息を控除(単利計算)して、左の計算式によつた額。
二三万円×(六二年÷六年)×九五%=二一八万五〇〇〇円
(原告妃美は、本件事故により、生涯車椅子を片時も手放せない生活を余儀なくされた。自動車が現代人の社会生活を送るうえにおいて、必要不可欠な足代わりである実情に鑑みて、その改造費は認められるべきである)
【将来運転可能か否か、自動車を購入するか否か、車両の交換の必要性、金額、耐用年数等不確定な物品であり、予測に基づく損害、現実に発生していない損害については賠償の対象とならない】
(九) 家屋改造(新築)費 一三八八万三二〇七円(原告妃美の専用住宅の新築代金一五六〇万〇七九四円のうち、身体障害者用仕様にかかる家屋建築代金一一七八万六二八一円の内金九九九万二六五二円及び右家屋内の身体障害者用設備機器一式の代金三八九万〇五五五円の合計額。新築であるが、旧家屋を改造するとなると、右一一七八万円余では到底不可能である)
【重度後後遺症を残した場合、玄関、浴室、トイレ、階段を改造したり、ベツド補助椅子等を新たに備え付けるなど必要性の範囲内の妥当な実費は賠償の範囲内であるが、本訴の請求は、住宅の改造ではなく、全くの新築であり、他の同居者にも恩恵が認められることなどからも、大幅に減額されなければならない】
(一〇) 後遺障害による逸失利益 七七〇八万四〇六〇円(原告妃美は、当時高知県立西高等学校普通科二年生在学中であり、右高校の卒業生の多くが大学に進学していること、同原告の成績、父親の学歴などに照らし、原告妃美は、本件事故に遭わなければ大学に進学し、卒業後、相応の職業に就職できたことは確実である。したがつて、卒業時二二歳として、六七歳まで四五年間の就労可能年数に対応するライプニツツ係数を、平成六年度、産業計・企業規模計・女子労働者の旧大・新大卒の全年齢平均額に乗じて算出すべきである。
四三三万六九〇〇円×一〇〇パーセント×一七・七七四=七七〇八万四〇六〇円
なお、原告妃美の逸失利益額は右のとおりとなるが、過失相殺なども考慮し、内金請求とする)
【事故当時一六歳、症状固定時一九歳の原告妃美については、高卒女子の全年齢平均賃金額とライプニツツ方式により算出すべきである】
(一一) 傷害による慰謝料 五〇〇万円(傷害の内容、程度と入・通院の期間を総合勘案すると、五〇〇万円が相当である)
【二五〇万円が相当である】
(一二) 後遺障害による慰謝料 三〇〇〇万円(原告妃美は、本件交通事故により、後遺障害一級三号として常時付添介護を要し、しかも、一生車椅子の生活を余儀なくされ、将来就職は勿論、幸せな結婚もできない状態に陥つている。これら原告妃美の苦痛を慰謝するには、三〇〇〇万円を下らない)
【三級三号該当であり、二四〇〇万円が相当である】
四 原告真瑛について
1 傷病名【概ね認める】
頭部(約一四センチメートル)、前額部(約七センチメートル)、左下腿(約一五センチメートル)、左上眼瞼(約二センチメートル)裂創、頭部・胸部・腹部・骨盤打撲、左下腿、右下腿打撲、左脛骨・腓骨々折(複雑)、腹腔内出血、肝損傷(重症)、外傷性シヨツク、左肘、右肘、右下腿サツカ傷。
2 治療状況【不知】
(一) 入院 藤原病院(南国市大埇乙九五五番地)
平成三年九月二二日(事故当日)ないし平成四年一月六日までの一〇七日間
(二) 通院 藤原病院
平成四年一月七日ないし同年九月二四日までの二六二日間のうち、通院実日数二二日
3 損害【不知ないし争う】
(一) 診療費 二万八二八〇円(高知医科大学医学部附属病院眼科において、平成三年一二月四日、同月二四日に治療等した費用)
(二) 入院中の諸雑費 一四万九八〇〇円(一日一四〇〇円として、一〇七日間分)
【一日一二〇〇円が相当である】
(三) 医療器具代 七万三八〇五円(藤原病院の医師の指示で平成三年一二月一七日、株式会社かなえ義肢製作所に支払つた短下肢装具一式の代金)
(四) 通学等タクシー代 二万五〇〇〇円(通院時の送迎及び退院後の一か月間の学校の送迎による自家用車の燃料代金)【不知】
(五) 介護費 九六万四五四〇円(左記(1)~(3)の合計額)
平成三年九月二二日ないし平成四年一月六日までの間のうち、
(1) 職業付添人費 八四万五〇〇〇円(平成三年一〇月一日ないし同年一二月末までの間の右期間における職業付添人費用)
(2) 付添人紹介手数料 二万九五四〇円(右(ア)記載の職業付添人紹介の手数料として、高知家政婦紹介所に支払つた代金)
(3) 近親者の付添人費用 九万円(平成三年九月二二日ないし同月末日までの九日間と、平成四年一月一日ないし同月六日までの六日間の右合計日数一五日における原告宗一及び訴外祖父母の一日六〇〇〇円の割合にて算出された金額)
【介護費は、一日当たり四五〇〇円が相当である。なお、原告妃美と同室であつたと推測され、原告妃美と同時に介護したものであり、二人分として同時に請求することは不相当である】
(六) 傷害による慰謝料 一五五万円(約三・三か月(一〇七日)の入院及び通院〇・七か月(通院実日数二二日)の通院を前提として、これにより算出した額)
【原告主張の入通院期間を前提とすれば、九七万円が相当である】
五 原告妃美の受傷(後遺障害一級三号)による父原告宗一の慰謝料 五〇〇万円(原告宗一は、昭和六一年、妻と離婚後、原告妃美、同真瑛の親権者父として、両名を温かく養育・監護してきたものであり、その中で、原告妃美は、勤勉で成績優秀な学生であり、原告宗一は、原告妃美を、できれば大学にも行かせてあげたい気持ちも有しており、将来親として多大の期待を抱いていたにもかかわらず、一生車椅子の生活を余儀なくされる重篤な後遺障害を惹起させられたことに対する父としての原告宗一の精神的苦痛は測り知れないものである。また、原告妃美の入院中、被告は、病院に一度見舞いに来たのみで、それも、原告妃美の症状に気遣う訳でもなく、「わしやあ、悪うない」等と言うのみで、誠意がない。これらの事実に照らすと、原告宗一の被つた精神的苦痛を慰謝するには、少なくとも五〇〇万円を下らない。)
【過大かつ相当因果関係がなく、受傷者本人の慰謝料で足りるものである。認めるとしても精々一五〇万円が相当である】
六 過失割合
以下の理由から、被告七割、原告妃美三割が相当である。
本件事故現場は、被告主張のとおり、見通しの良い場所である。そして、衝突部位は、被告車両の前部中央付近であり、かつ、被告は、衝突時直前及び衝突時において、急制動や緊急回避等の措置を取つていない。すなわち、被告は、衝突するまで原告車両には気付いていなかつた。
結局、被告の過失は、前方不注視及び、事故状況からみて、被告の速度の出し過ぎ(法定速度は時速五〇キロメートルであるが、被告は、時速約七〇キロメートルで走行していた疑いがある)である。
【以下の理由から、五対五が相当と考える。
一 事故現場の状況
本件事故現場合は、被告が通行していた南北道路幅員六メートルの農免道路と、原告妃美が通行していた東西道路幅員三メートルの市道が交わる交通整理の行われていない交差点である。
交差点の見通し状況は、双方の道路とも良好であるが、原告妃美の通行道路には一時停止の交通規制がなされており、標識及び標示は正常に設置されていた。
二 事故発生状況
原告妃美は、事故当日午後七時三〇分ころ、原動機付自転車を運転して、右交差点を、南国市田村方面から同市篠原方面に向け直進しようとしたものであるが、同交差点の直前で一時停止をしたものの、右方からの車両が同交差点を通過したので、他に車両はないものと軽信して、左方を一瞥したのみで左方道路の安全を確認することなく、時速約一五キロメートルで交差点に進入した過失により、折から左方道路から進行してきた被告運転車両に気付かず、同車に自車左側を衝突させ、その衝撃により、原告妃美自身の受傷と自車に同乗していた原告真瑛に傷害を与えたものである。
三 原告妃美の過失
1 原告妃美は、交差点の手前で一時停止をし、右方からの車両が同交差点を通過した後、発進しながら左前方を見ているが、待避所の自動販売機のところまでしか見ておらず、しかもこの自動販売機は交差点のすぐ近くにあり、これではその時点では同人から更に左にあつた被告車両に気付くには不十分である。このように、原告妃美は、左方道路を簡単に一瞥したのみで、左方からの車両はないものと軽信して、左方道路の安全を十分確認せずに交差点を進入した過失がある。
2 原告妃美は、弟である原告真瑛を原動機付自転車に乗せて運転していたが、これは道路交通法及び同法施行令では定員オーバーとして禁止されている危険な行為である。しかも、乗せていた場所は原動機付自転車の前であることからして、ハンドル操作が不自由であり、かつ前方が見えにくい態様で運転していた。さらに、事故日時点で原動機付自転車の免許を得てから約五か月しか経つておらず、運転未熟であるうえ、その運転には自信がなかつたというのであるから、原告妃美の過失はなおさら重大というべきである】
七 弁護士費用 一四三四万円(原告らは、被告から損害額の任意の弁済を受けられないため、原告ら訴訟代理人に本訴の提起と追行を委任し、その費用及び報酬を支払う旨約した。そのうち、原告妃美につき一三八〇万円、原告真瑛につき一九万円、原告宗一につき三五万円は、本件事故と相当因果関係のある損害である)
【本件訴訟を原告ら代理人に委任したことは認め、その余は争う。認容額が高額な場合、一割より低下するのが弁護士会報酬基準である】
八 損害の填補 三〇〇〇万円(原告妃美は、被告が加入している自賠責保険から、後遺障害分として三〇〇〇万円の支払を受けた)
【認める。なお、既払金には、更に以下のものがある。
一 原告妃美にかかる治療費 三一一万九四八七円
二 原告真瑛にかかる治療費 六九万五八七五円】
九 よつて、
1 原告妃美は、損害金合計額から填補金三〇〇〇万円を控除した金員の内金一億二一九八万二四一〇円及びこれから更に弁護士費用を控除した内金一億〇八一八万二四一〇円に対する本件事故の日である平成三年九月二二日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を、
【遅延損害金の起算点につき争う。医療器具代金、介護費、車椅子代金、家屋新築代金並びに後遺障害による逸失利益及び慰謝料等については、症状固定時を基準時とすべきである】
2 原告真瑛は、損害金合計二一四万三九九七円及び弁護士費用を控除した内金一九五万三九九七円に対する本件事故の日である平成三年九月二二日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を、
3 原告宗一は、損害金合計三八五万円及び弁護士費用を控除した内金三五〇万円に対する本件事故の日である平成三年九月二二日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める。
理由
一 事実第二のうち、一(事故の発生)、二(被告の責任原因)、三1(原告妃美の傷病名)、三3のうち、原告妃美の自賠責保険後遺障害認定等級が第一級三号と認定されていること、三4(二)(1)(原告妃美の入院中の雑費)のうち、一日当たり一二〇〇円の割合の限度で、三4(五)(1)、(2)(原告妃美の入院中の介護費)のうち、一日当たり四五〇〇円の割合の限度で、三4(二)(原告妃美の傷害による慰謝料)につき二五〇万円の限度で、三4(三)(原告妃美の後遺障害による慰謝料)につき二四〇〇万円の限度で、四1(原告真瑛の傷病名)、四3(二)(原告真瑛の入院中の雑費)のうち、一日当たり一二〇〇円の割合の限度で、四3(六)(原告真瑛の傷害による慰謝料)につき九七万円の限度で、六(過失割合)につき、原告妃美に少なくとも三割の過失があること、七(弁護士費用)のうち、原告らが本件訴訟を原告ら代理人に委任したこと、八(損害の填補)のうち、原告妃美が被告の自賠責保険から三〇〇〇万円の支払を受けたこと、の各事実は当事者間に争いがない。
二 第二の三2(原告妃美の治療状況)について
証拠(甲二ないし四。枝番を含む)により認めることができる。
三 第二の三3(原告妃美の後遺障害の程度及び等級)について
原告妃美が、自賠責保険後遺障害一級三号の認定を受けていることは当事者間に争いがなく、また、同原告の本件受傷による脊髄損傷及び胸髄損傷による下半身麻痺の回復は絶望である(原告妃美本人、弁論の全趣旨)ことが認められるが、同原告は、生涯車椅子生活を強いられるものの、一人で入浴や排便、身障者用の自動車の運転、料理等を行うことができ、自分でできないことは、高所にある物を取ること、床を拭くこと、大きな物の洗濯、生ごみの処理などであることが認められ(原告妃美本人)、これらの事実に照らすと、同原告の後遺障害の等級は、神経系統の機能に著しい障害を残し、「随時介護」を要するもの(二級三号)に該当すると認めるのが相当である。
四 第二の三4(原告妃美の損害)及び八【一】(被告側支払済み治療費)について
原告妃美の損害額は、左記1ないし12の合計一億六五二七万九三三六円と認める。
1 (一)の診療費 左記(一)、(二)、(四)の合計三一四万七六五七円と認める。
(一) 歯の治療費 一万五一六〇円(甲二四の一ないし五)
(二) 別病院での治療費 一万三〇一〇円(甲二五の一ないし五)
(三) 平成六年四月五日の治療費 症状固定日(平成六年二月一〇日)以降の治療費であり、特段の事情の主張・立証がないので認めることができない。
(四) 三一一万九四八七円(被告側支払済みの治療費。乙三の一)
2 (二)の入院中の諸雑費 左記(一)、(二)の合計五八万五二八〇円と認める。
(一) (1)の概括請求分は、一日当たり一四〇〇円として三八七日分の五四万一八〇〇円と認める。
(二) (3)の診断書等の文書料 四万三四八〇円(甲二八の一ないし七、弁論の全趣旨)
(三) (2)の貸しベツド料などは、右(一)の金額を定めるに当たつて考慮すれば足り、別途計上しない。
3 (三)の紙おむつ代等のその他の雑費 右2(一)の一日当たりの金額を定めるに当たつて考慮すれば足り、別途計上しない。
4 (四)の医療器具代 二三九万八三〇六円(左記(一)~(四)の合計額)
(一) (1)の毎年間必要とするレツク・パツク、尿パツク等の生涯にわたる購入代金 一九五万〇一四八円(甲三〇の一、三〇の二の一、二、五九。年間一〇万二〇〇〇円を、平成四年度を一八歳とし、余命年数を六四年として、ライプニツツ係数(中間利息の控除方式としては、ライプニツツ方式の方が相当である)を乗じる方式によつて算出する。
一〇万二〇〇〇円×一九・一一九一=一九五万〇一四八円
(二) (2)の頸椎装具一式の代金 九万一九二五円(甲三一の一)
(三) (3)の両長下肢装具一式の代金 一九万六二七〇円(甲三二の一、六〇)
(四) (4)のエアマツト一式等 一五万九九六三円(甲三三の一ないし八、六一)
5 (五)の介護費 三六七八万六八〇四円(左記(一)~(三)の合計額)
(一) (1)の入院中の付添費 二三二万二〇〇〇円(原告妃美の受傷の程度、入院期間などから一日当たり六〇〇〇円とするのが相当である。六〇〇〇円×三八七日=二三二万二〇〇〇円)
(二) (2)の通院中の付添費 三二一万円(右同様、六〇〇〇円×五三五日=三二一万円)
(三) (3)の退院後、平均余命年数六二年間の付添費 三一二五万四八〇四円
前記三のとおり、原告妃美の後遺障害の程度、状態は、自分自身の努力があるとはいえ、常時介護を要するとは認められず、随時介護を必要とするに止まることを前提とすると、同原告が、自らの努力で、感覚のない排便の処理等をこなしていること、現在同原告の世話をしている祖母は高齢で体調も十分ではなく、いずれ専門の付添人の必要性も予想されること(原告妃美本人、弁論の全趣旨)などを考えても、その付添費は一日当たり四五〇〇円を基礎として算出するのが相当である。
よつて、左のとおりとなる。
四五〇〇円×三六五日×一九・〇二八八(六二年のライプニツツ係数)=三一二五万四八〇四円
6 (六)の通学等タクシー代 二一万二三五四円(左記(一)、(二)の合計額)
(一) 入通院タクシー代 二万六一五〇円(甲三四の一ないし六、弁論の全趣旨)
(二) 平成四年九月一日から平成六年三月一日までの二六三日間の学校・自宅間の送迎による自家用車輌の燃料代 一八万六二〇四円(学校・自宅間の距離は片道二三ないし二五キロメートル(原告妃美本人)であり、ガソリン一リツトルの値段は現在一一八円程度であるから、当時もその程度であつたと推認し、自家用車はガソリン一リツトル当たり約八キロメートル走行できるとして計算すると、以下のとおりとなる。
四八km(往復の概算距離)÷八km×一一八円×二六三日=一八万六二〇四円)
7 (七)の車椅子代 二四二万四三七三円
証拠(甲三五(枝番含む)、原告妃美本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告妃美が、生涯にわたつて二台の車椅子を必要とすること、その単位は、備品等を含め、平成四年六月に購入した一台は一六万二八五二円(甲三五の一の六、七の修理費は除く)、平成五年一二月に購入した他の一台は一八万一〇四一円であること、これらは概ね四年毎に交換することが予定されること、が認められる。そして、原告妃美の平成四年の平均余命を六四年(小数点以下切捨て。以下同じ)、平成五年のそれを六三年とし、なお、原告妃美は、現実には、四年毎に前払を強いられるわけであるが、便宜上、一台については毎年平均して四万〇七一三円(一六万二八五二円÷四年)を、もう一台は四万五二六〇円(一八万一〇四一円÷四年)をそれぞれ支出するものと考え、新ホフマン方式により中間利息を差し引く(四年毎の支出を便宜一年毎の支出に細分したので、先払となることを考え、ライプニツツ方式によらない)と、以下のとおりとなる。なお、原告主張の特別注文費一〇万五〇〇〇円は、証拠上明らかでない。
四万〇七一三円×二八・三二四六(六四年の新ホフマン係数)=一一五万三一七九円
四万五二六〇円×二八・〇八六五(六三年の新ホフマン係数)=一二七万一一九四円
一一五万三一七九円+一二七万一一九四円=二四二万四三七三円
8 (八)の車両購入改造費 八九万〇五〇二円
証拠(甲三六、七六、原告妃美本人)によれば、原告妃美は、運転免許を保有し、身体障害者用に改造した自動車であれば運転が可能であり、そのため平成六年六月に自動車を購入し、それを身体障害者用に改造したこと、改造費用として、申請手数料一万五〇〇〇円を含め二三万円が必要であること、が認められる。そして、今日の自動車の必要性、同原告の身体状況等に照らすと、右改造費は本件事故と相当因果関係があるというべきであり、自動車の耐用年数を六年とすると、同原告は、六年毎に右改造費の支出を余儀なくされるものと認めることができる。もつとも、同原告が平均余命(八二歳)まで運転が可能だと考えるのは、高齢運転者の問題が指摘されている昨今の状況や同原告の身体状況などを考えると現実的ではなく、同原告が自ら自動車を運転するのは六五歳までの四五年間と仮定するのが相当である。そして、右7同様、改造費用は毎年三万八三三三円(二三万円÷六年)ずつ支出するものと仮定し、右7同様新ホフマン方式により中間利息を差し引くと、以下のとおりとする。
三万八三三三円×二三・二三〇七(四五年の新ホフマン係数)=八九万〇五〇二円
9 家屋改造(新築)費 一一七五万円
証拠(甲六二ないし六五(枝番を含む)、七〇の一ないし一〇、乙四、証人植村佳史、原告妃美本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告妃美は、従来居住していた祖父母の家屋(以下「旧家屋」という)の隣に、車椅子での生活等がしやすいよう、身体障害者用住宅として、特に水回り、廊下幅、床の段差等に留意した家屋(以下「新家屋」という)を総額一五六〇万〇七九四円で新築したこと、その設計料は六四万三七五〇円を要したこと、新築費用以外に、家屋内の設備機器一式(ガス給油器、照明器具、食器棚、テーブル、机、ベツド等)として三三四万四二四五円(同原告が三八九万〇五五五円と主張している分)を要したこと(以上の合計一九五八万八七八九円を以下「新築等費用」という)、本件家屋は平家建てで床面積が八〇・七三平方メートル、間取りがいわゆる二LDKであることが認められる。
そこで、右新築等費用(同原告が請求している金額はそのうち一三八八万三二〇七円)のうち、どの程度が本件事故による損害と言えるかについて検討するに、証拠(甲六五の一ないし五)及び弁論の全趣旨によれば、旧建物を車椅子を利用できるような家屋に改造するとした場合、部分的な改造は困難で、また、廊下や間口の幅を広げたりすると、二階部分に影響するなどして、新築同様あるいはそれ以上の費用が掛かる可能性があることが認められ、隣地に新家屋を建てたことは相当な措置と認めることができる。しかし、新築等費用を全て本件事故と相当因果関係内にあるとして被告に負担させるべきかと言うと、同原告自ら請求額から差し引いている土台や屋根部分に掛かつた費用はもとより、前記家屋内の設備機器一式も、純粋に身体障害者用のものがどの程度あるのかは不明であり(通常と同じ品物であれば、新家屋新築に伴い、通常のサイクルより早く買い替えなければならなくなつたことが損害になろう)、また、新家屋は、例えば同原告の祖母のような高齢者にとつては相当程度の利便があると考えられること、幅が広い廊下なども新家屋を利用する者にとつて快適性が向上すること、新家屋は、原告妃美一人の家とするには広すぎると考えられること、新家屋程度の家を通常の設計で新築した場合でも、三・三平方メートル当たり四五万円ないし五〇万円は掛かり、新家屋の建築費との差は三・三平方メートル当たり一〇万円程度であること(証人植村佳史)、などを総合考慮すると、新築等費用のうち、本件事故と相当因果関係があるのは、その約六割の一一七五万円と見るのが相当である。
10 後遺障害による逸失利益 七七〇八万四〇六〇円
証拠(甲六七、六八の一ないし四、七三ないし七五(枝番を含む)、七七の一、二、原告妃美本人)及び弁論の全趣旨によれば、本件事故当時、原告妃美は、高知県立高知西高等学校普通科二年生在学中の高校生であつたこと、同原告の父である原告宗一は、国立高知大学農業工学科に進学している(なお、家業の都合で中退している)こと、同原告や原告妃美は、同原告が大学に進学することを当然と考えていたこと、同原告の右高校での成績はクラスで常に上位三分の一ないし四分の一程度に入るもので、本件事故後復学してからは、クラスで二番の成績をとるなど、優秀な成績で右高校を卒業していること、右高校は県内でも一、二を争う進学校であることが認められ、これらの事実に照らすと、本件事故に遭わなければ、原告妃美は、大学に進学し、その後相応の職業に就職できた可能性が極めて高かつたというべきである。
したがつて、その逸失利益を算定するには、平成六年度の産業計・企業規模計・女子労働者の旧大・新大卒の全年齢平均賃金額に、二二歳から六七歳の四五年間の就労可能年数に対応するライプニツツ係数を乗じて算出するのが相当である。
四三三万六九〇〇円×一〇〇%(労働能力喪失割合)×一七・七七四〇=七七〇八万四〇六〇円
11 傷害による慰謝料 四〇〇万円(傷害の内容、程度と入・通院期間、態様を考慮すると、四〇〇万円が相当である)
12 後遺障害による慰謝料 二六〇〇万円(原告妃美は、前記三のとおり、実質二級三号の後遺症を残し、それは一生涯続くものと認められるが、今なお背骨に金属を入れられ、その手術を受けなければいけないとか、下半身麻痺などから失禁等の心配を常に抱えていること、床ずれによる臀部褥創の防止に常に気を使わないといけないこと、頻繁に膀胱炎にかかる心配があることなどを考えると、その精神的苦痛を慰謝するには二六〇〇万円を要すると認める)
五 第二の四2(原告真瑛の治療状況)について
甲五の一ないし九により認められる。
六 第二の四3(原告真瑛の損害)等について
原告真瑛の損害額は、左記1ないし6の合計三四四万六六〇〇円と認める。
1(一) (一)の診療費 二万八二八〇円(甲三八の一、二)
(二) 第二の八【二】の被告側既払分 六九万五八七五円(乙三の二)
2 (二)の入院中の諸雑費 一三万九一〇〇円(一日一三〇〇円として、一〇七日間分)
3 (三)の医療器具代 七万三八〇五円(甲三九の一ないし三)
4 (四)の通学等タクシー代 二万五〇〇〇円(弁論の全趣旨)
5 (五)の介護費 九三万四五四〇円(以下の(一)~(三)の合計額)
(一) (五)(1)の職業付添人費 八四万五〇〇〇円(甲五五の一ないし八、七一の一ないし一四、弁論の全趣旨)
(二) (五)(2)の付添人紹介手数料 二万九五四〇円(甲五五の一ないし八、弁論の全趣旨)
(三) (五)(3)の近親者の付添人費用 六万円(原告真瑛主張の合計一五日間のうち、藤原病院での六日間は原告妃美と同室であつたと認められる(弁論の全趣旨)ので、その間は一日当たり二五〇〇円とし、その余は一日当たり五〇〇〇円として算定する。
二五〇〇円×六日+五〇〇〇円×九日=六万円)
6 (六)の傷害による慰謝料 一五五万円(原告真瑛の受傷の程度、入・通院の期間などに照らし、一五五万円が相当である)
七 第二の五(原告宗一の慰謝料)について 五〇〇万円(原告妃美の受傷の程度等からすると、父である原告宗一の精神的苦痛を慰謝するには五〇〇万円を下らないとの同原告の主張は相当である)
八 第二の六(過失割合)について 五対五と認める。
被告進行道路の方が明らかに幅員が広いなど争いがない道路状況や事故態様、被告は制限速度(五〇キロメートル毎時)以下で走行していたと考えられること(鑑定結果)、被告の前方不注視の過失は否定できないが、その態様は、進路前方の遠方にある信号に注意を奪われていたもの(甲一七、被告本人)で、過失の程度はそれほど大きなものとはいえないこと、原告妃美には、左方の安全確認不十分の過失以外に、原告真瑛を被害車両の運転席の前側に乗せていた落ち度もあることなどを考えると、本件事故についての責任割合が、被告の方が原告妃美よりも、より大きいとは考え難い。そして、被告が、過失割合につき五対五であると主張していることも考慮すると、その過失割合は、被告主張のとおり五対五と認めるのが相当である。
九 過失相殺後の損害額(弁護士費用を除く)
1 原告妃美について 八二六三万九六六八円
一億六五二七万九三三六円×〇・五=八二六三万九六六八円
2 原告真瑛について 一七二万三三〇〇円
三四四万六六〇〇円×〇・五=一七二万三三〇〇円
3 原告宗一について 二五〇万円
五〇〇万円×〇・五=二五〇万円
一〇 第二の九(損害の填補)について
1 原告妃美 三三一一万九四八七円(左記(一)、(二)の合計)
(一) 三〇〇〇万円(自賠責からの支払。争いがない)
(二) 三一一万九四八七円(治療費分。乙三の一)
2 原告真瑛 六九万五八七五円(治療費。乙三の二)
一一 過失相殺後の損害額から損害の填補を差し引いた額
1 原告妃美 四九五二万円(一万円未満四捨五入)
八二六三万九六六八円-三三一一万九四八七円=四九五二万〇一八一円
2 原告真瑛 一〇三万円(同)
一七二万三三〇〇円-六九万五八七五円=一〇二万七四二五円
3 原告宗一 二五〇万円
一二 弁護士費用について
1 原告妃美分 三五〇万円(認容額の約七%が相当)
2 原告真瑛分 一〇万円
3 原告宗一分 二五万円
よつて、<1>原告妃美の請求は、五三〇二万円及びこれの内金四九五二万円に対する事故の日である平成三年九月二二日から(なお、被告は、遅延損害金の起算日につき症状固定日からとの主張をするが、採用しない)支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の、<2>原告真瑛の請求は、一一三万円及びこれの内金一〇三万円に対する事故の日である平成三年九月二二日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の、<3>原告宗一の請求は、二七五万円及びこれの内金二五〇万円に対する事故の日である平成三年九月二二日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の、それぞれ支払を求める限度で理由があり、その余は失当である。
(裁判官 久我泰博)